iPhoneとiPadと、出版の未来

僕はマックユーザーではないし、iPhoneが出たときも面白そうだとは思ったけれど、ガラパゴス化した日本の携帯電話市場では受け入れられないだろうと思ったし、自分が所有することになるとは夢にも思っていなかった。それが一度所有してみたら、これがなんともはや。面白すぎて何でもっと早く手に入れなかったのかと悔やむことしばし。そんな折、アップルからiPadが正式に発表された。スペックを見るだけだと「なんだただの大きなiPhoneじゃん」なんて声も聞こえてきそうだけれど、それは確かに間違った意見じゃないけれど、コンテンツビジネスに与える影響はそれほど小さなものじゃないと僕は思っている。

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そんなこんなで、今日はいつもと指向を変えて仕事の話なんかをしてみる。僕はもともとアップルに対する思い入れはそれほどでは無いけれど、彼らが作り出す「機器+αの何か」はずっと感じ取っていたし、単純に彼らがコンピューターを製造するメーカーじゃないというのはなんとはなしに理解している。だから今回のiPadが、シングルタスクで低い解像度のパネルを使用していて相変わらずFlashには対応していなくとも、アップルが考えているその使い方を想像すると、確かな未来の一つの形が、そこにあるんじゃないかと思ってしまうのだ。

厳しい話しか聞こえてこない出版業界の端っこで、最近僕は頭を抱えることの方が多くなっている。本はどんどん売れなくなり、本を売る書店はその数をどんどん減らし、売り上げの中核を担っていた広告出稿は激減の一途を辿っている。八方ふさがりというのはこういうことを言うのだ。広告の収入減は何も出版に限った話ではなく、テレビ・新聞といった20世紀の3大メディアは足並みそろえて売上を落としている訳だけれども。そのただ中で、出版はまったく先の見えない状態がずっと続いていて、恐らく改善の見込みは無い。

その要因はいくつもあって、完全なる構造不況だと僕は考えている。ただ、その考えが正しかろうと正しくなかろうと、紙をベースにしている“本”という媒体が、今後数年の間に大きな痛みを伴う変革期を迎えるのは確実なことだと思う。通勤時に電車の車内を見回すと、雑誌や書籍を手にしている人は激減したと感じられるし、個人的な皮膚感覚でしかないけれど、過半数が何がしかの携帯端末(電話だけじゃなく、DS・PSPなどの携帯ゲーム機を含めて)を片手にその時間を過ごしているように感じられる。

通勤の時間は会社員にとって、自分の時間を確保する本当に貴重な時間なわけで、そこに見える景色は、彼らにとってのその貴重な時間とお金を、携帯端末に対して充当するのが、本にそれをするよりも彼らが必要だと考えていることの表れなのだ。出版の持つマーケットが減少しているのが、手にとるようにわかる瞬間。ただ逆に考えれば、付け入る隙はそこにある。そこにしか無いとも言える。iPhoneを手にして理解できたのだけれど、優れたインターフェースは、コンテンツの魅力をより引き出すのだと。

たとえば、僕は最近Twitterにはまっていて、ウエブではブラウザやクライアントソフトを介して閲覧しているけれど、iPhoneのアプリに「Natsu Lion」という優れたTwitterクライアントがあって、これを通していつものタイムラインを眺めるだけで、それがまったく違ったものに感じてしまうことすらある。iPhone上で眺めるTwitterは、圧倒的にスムーズに動き、複数のコンテンツが驚くほどシームレスにつながっている感じがする。これは、今までのウエブでは感じられなかった驚きだった。

紙で作られた“本”という媒体は、活字を読み・遺すために極めて優れた選択肢だった。数百年間、その地位は変化する事がなかったのだから。しかしながら、“本”は違うメディアにその地位を奪われつつある。“本”は、情報のスピード感、ソーシャルメディア性に劣る。新聞ですら、半日遅れのメディアと言われてしまう。一つの意見に対して、複数の肯定論・反論が錯綜するウエブメディアが一般化すればするほど、“本”が持つ情報の一方向性が際だってしまうのも事実。特に雑誌の持つ優位性は、急速に失われてしまっている。

そこで僕は、どうしてもiPhoneの持つ優れたユーザインターフェースに、未来を感じざるを得ないのだ。“本”の生きる道は、もはやここしかないんじゃないかとも。本が持つ質と、ウエブの持つ双方向性、そしてPCとはまた違ったインターフェース(手で持って見られるということも含め)の融合が、新たなコンテンツを生み出すのではないかと、信じてやまない。

  • posted at: 2010/02/03/Wed 23:26:09 +0900
  • category:雑記
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